僕が作った泡だて器なんだけど、アマンダさんにそれを貸してあげたらすっごい勢いで生クリームを泡立て始めたんだよ。
「これ、本当にすごいわ。細い針金で作ってあるのに、全然ヘタらない」
「わぁ! アマンダさん、そんなにやったら、かき混ぜすぎちゃうよ」
でもアマンダさん、2本のフォークでかき混ぜるだけでも生クリームを泡立てる事ができるでしょ。
だから僕、フォークの時とおんなじくらいすっごい勢いで生クリームを泡だて器でかき混ぜてるのを見て、大慌てとめたんだ。
「ごめんなさい、楽しくってつい」
「もう! 生クリームは泡立てすぎるとおいしくなくなっちゃうんだからね」
僕はアマンダさんをコラーって怒った後、すぐに生クリームをかき混ぜてたボウルを取り上げたんだよ。
でね、中にあるクリームをちょびっとだけ指で掬ってパクリ。
そしたらさ、ちょっと硬めにはなってたけど、まだぼそぼそにはなってなかったからほっとしたんだ。
「よかった。まだこれだったら大丈夫だよ」
「そう、よかったわ。それじゃあ、ホウリを入れて食べてみましょうか」
って事で、早速小さく切ったホウリをボウルに入れて生クリームに絡めたんだよ。
でね、それを木のおさじで掬って、食べてみたんだ。
「うん。やっぱりおいしいね」
そしたらさ、さっきはあんなに酸っぱかったのに、生クリームのおかげでちょうどいいくらいのおいしさになってたもんだから、思わずにっこり。
アマンダさんにも、おいしくなったねって言ったんだよ。
「っ!?」
「あれ? どうしたの、アマンダさん」
でもね、アマンダさんは何でか知らないけど、お口に木のさじを入れたまんますっごくびっくりしたお顔で固まっちゃってたんだ。
だから僕、どうしたの? って聞いてみたんだよ。
そしたらさ、動き出したアマンダさんに、これなんなの? って逆に聞き返されちゃったんだ。
「ルディーン君。これ、バターの原料になるものから作ったはずよね? なのに全然脂臭くなくって、どうしてこんな滑らかな味わいのあるものになっているのよ」
「何でだろう? そんなの、僕にも解んないよ」
生クリームを泡立てるとふわふわの甘いお菓子になる事は知ってるんだよ。
でもね、それがなんでそうなるのかなんて、僕には解んないもん。
だから僕にも解んないよって教えてあげると、アマンダさんは一人で考え始めちゃったんだ。
「これはもしかして、卵と同じ、いえ、どちらかというと白身だけを泡立てた時と同じような舌触りね」
だから僕、そんなアマンダさんの邪魔をしないようにって、一人でボウルを抱えながら待ってたんだけど、
「あー、ルディーンがまた一人で美味しいもの食べてる!」
そこにキャリーナ姉ちゃんが入ってきて、僕をコラーって怒ったんだ。
でね、すぐに僕んとこにタッタッタって走ってくて、おててを出したんだよ。
「あっ、キャリーナ姉ちゃんだ」
「ルディーン、私にもちょうだい」
「いいよぉ」
僕、別に生クリームを独り占めしてたわけじゃないでしょ。
だからキャリーナ姉ちゃんに、はいって生クリームが入ってるボウルを渡そうとしたんだよ。
そしたらそこに、お母さんたちが入ってきたんだ。
「キャリーナ、お店にお邪魔しているんだから、先に行っちゃダメじゃないの」
「お母さん、おかえり」
だから僕、キャリーナ姉ちゃんにボウルを渡さずに、そのまんまお母さんとこに行ったんだよ。
そしたらさ、僕が持ってるボウルを覗き込んだお母さんがこんな事言い出したんだよね。
「あら、ルディーン。スポンジに生クリームを塗るケーキを作るって言っていたけど、前に作ってくれたロールケーキも作るつもりだったの?」
僕が持ってるボウルに入ってる生クリームって、アマンダさんが泡立てすぎちゃったもんだから、いつものよりも硬かったでしょ?
それにもう果物まで入っちゃってるもんだから、それを見たお母さんはちょっと勘違いしちゃったみたい。
だからロールケーキも作るの? って僕に聞いてきたんだ。
そしたらね、お母さんと一緒にお部屋に入って来たニコラさんたちが、不思議そうなお顔でお母さんに聞いたんだよ。
「ロールケーキって、何ですか?」
「私たちが食べたのは、スポンジケーキにその白いのを塗って果物をのせたものだったけど」
「うん。それの事、ルディーン君はケーキって呼んでたよね。でもその白いのには果物が入ってるみたいだし、もしかしてまた別のお菓子なのかな?」
そう言えばイーノックカウの僕んちじゃ、まだロールケーキは作った事無かったっけ。
それを思い出した僕は、ニコラさんたちにロールケーキの事を教えてあげようって思ったんだ。
でもね、
「ルディーン君。なに、そのロールケーキっていうのは。デコレーションケーキとはまた別に、そんなお菓子があるの?」
さっきまでなんかを考えてたアマンダさんがすっごい勢いで聞いてきたもんだから、僕、すっごくびっくりしたんだよね。
だからすぐにお返事ができなかったんだけど、そしたら代わりにお母さんが答えてくれたんだ。
「ああ、それはですね、薄く焼いたスポンジケーキでちょっと硬めに泡立てた生クリームを巻いたお菓子なんですよ」
「スポンジケーキで、この生クリームを巻いたお菓子」
そしたらさ、それを聞いたアマンダさんは、僕の持ってる生クリームをじーっと見てから僕にこう聞いてきたんだよ。
「ねぇ、ルディーン君。もしかして私が知らないお菓子、実はかなりの数があるんじゃないの?」
「アマンダさんが知らないお菓子? う〜ん、どうなんだろう?」
僕、アマンダさんがどんなお菓子を知ってるのかなんて知らないでしょ?
だからどうなのかなぁって頭をこてんって倒したんだけど、そしたらキャリーナ姉ちゃんがこんな事言い出したんだ。
「あのね、ルディーンはお家でしか作らないお菓子がいっぱいあるんだよ。私、その中でもプリンってのとアイスクリームが大好きなの」
「ぷりんにあいすくりーむ?」
キャリーナ姉ちゃんのお話を聞いたアマンダさんは、何の事を言われたのか解んなかったみたい。
だからちょっとの間、何かを考えてたみたいなんだけど、
「ルディーン君、ちょっとそのお菓子についてのお話しをしてもらえないかなぁ?」
、アマンダさんはすっごい笑顔なのに、なんかちょっぴり怖い感じがするお顔をしながら僕にそのお菓子の事を教えてって言ってきたんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
アマンダさんはお菓子職人になるくらいお菓子が大好きです。
だから知らないお菓子があると聞くと、少々暴走気味になってしまいますが、これは別にお店に出そうと思っているわけじゃないんですよ。
実際、今日教えてもらうはずのデコレーションケーキも、冷蔵機能のついたショーケースが無いこの世界では店に並べるのが難しいですからね。
なので今の状況は、単純に興味から来ています。
まぁ、だからこそ、ここまで暴走気味になっているのですがw